9.軽井沢移住 vol.9

軽井沢の住宅 移住・家づくり

– 軽井沢の住宅建築 外構と植栽 –

ご訪問いただきありがとうございます。

2019年に、長野県、軽井沢町に移住した“ぐじ”と申します。

vol.8に続き、外構と植栽のお話しです。

<軽井沢らしい外構と植栽とは?>

さて、Vol.5で述べたように、私の建築テーマは、「軽井沢らしい家」ということだったわけですが、外構や植栽においても「私が思う軽井沢らしさ」を徹底したいと思いました。

その「軽井沢らしさ」の前に、街の景観について私が感じることをお話ししたいと思います。

「共通景観」という言葉があります。ハウスメーカーが和風、北欧調、アメリカン、と各社独自のデザインを商品訴求する日本では、家々の雰囲気はバラバラで統一感とというものがなく、結果として街並みを美しく感じることはあまりないと思います。

これが私の経験したヨーロッパでは、住宅の考え方がまったく異なっていました。例えば私が暮らしたドイツのどこにでもある新興住宅地ですら、壁の色はベージュか白、屋根は必ず瓦葺きでテラコッタ色に統一されていました。そこに各家がきれいな植栽を植え、すべての家が窓辺に花を飾りますので、おのずと統一された美しい街並みが完成するわけです。

日本的な感覚で言うと、どれも同じような家で、違うデザインが欲しくならないのか不思議になりますが、実は彼の地に暮らし始めた当初、この疑問を直接現地の人に聞いたことがあります。答えは「なるほど・・」というものでした。

ドイツ人曰く、「僕は特別な見た目の家なんかほしくないよ。家は自分のものではあるけども、景観の一部という意味では、街ゆく皆のものでもあると思う。自己満足の目立つ家にするよりも、皆の心地よい暮らしのための環境をまず第一に考えたい。個性は植栽や花々、家のインテリアで表現したいと思う」

なぜこうも日本と違うのでしょうか? やはり日本の住宅は短い年数で壊すのを前提に作られていて、その間に好きなものを建てて楽しむように、商業ベースの家づくりが慣習として行われて来たということでしょうか? そうだとすると残念なことです・・。

話を軽井沢に戻すと、私は軽井沢、特に旧軽井沢を初めて訪れた時に、共通景観というものをとても強く感じました。そう感じた雰囲気を醸し出している要素は、大きく言うとおそらく以下の3つかと思います。

1. 多くの由緒ある建物は板張りで統一されている。

2. 昔から地域に根付く素材である浅間石が多用されている。

3. 軽井沢に生息する自然の植物を大切にしている。

もちろん、旧軽井沢のすべてに共通する話ではありませんが、旧軽井沢らしい、言ってみれば軽井沢らしいイメージの所はどこも同じ要素を感じました。

一方旧軽井沢でも、特に新しく建てられた家やマンション群などは、海岸にあるような大きな岩で土留めをしてあったり、苔庭ではなく芝生を敷き詰めていたり、軽井沢で自然に生えない植栽がしてあったりと、日本中どこにでもありそうな外構も多く見受けられます。

かつて私もそうだったので、イングリッシュガーデニングに憧れたりする気持ちは分かりますし、それを否定するつもりはありません。

しかし私の場合、軽井沢に住まわせてもらうにあたり、軽井沢というイメージを大切に、この共通景観を守っていきたいと強く思いました。それは統一された景観という意識がないと、結局その地域の特徴が薄れ、その地域の魅力がだんだんと無くなってしまうと考えるからです。

そしてそれを守るには、パリの景観を保つためにアンドレ・マルローが法律を制定したような政治的で大掛かりなことは期待できず、軽井沢ルールを汲み取り、個人個人が意識していくしかないと思います。

そのため外構や植栽に関して、私は次のように進めることにしました。

「外構」:軽井沢の伝統である浅間石を極力活用した外構計画とする。

浅間石は浅間山の噴火によって噴出した溶岩石の総称です。これが軽井沢の地層には多く埋まっていて、かつては土地を整地するとゴロゴロ大きなものが出てきたそうです。そのため軽井沢の住宅は、この浅間石を門扉や石段、石垣などに利用してきました。

そして、この浅間石は水を多く吸い込むため、湿度が高い軽井沢では表面に苔が生育し、軽井沢らしい景観を作ることになったわけです。ただし現在では長野県が浅間石の採掘を禁止しているため、かつてのように気軽に手に入るものではなく、特に大きな石は貴重なものになってきているそうです。そのため最近は群馬県側から採掘したものを使用する場合が多いと聞いています。

左)苔むす浅間石 右)浅間石による階段

しかしながら私は、なんとかこの浅間石を使って、私なりの軽井沢らしい外構を造作したいと思いました。

植栽」:軽井沢に生息している植物ですべての植栽を行う。

植栽については土地の造成を始める前から考えていて、雑木も含めて、極力伐採をせずに残すようにし、また移植可能な樹木はすべて掘り出し、造成に影響がない場所に一旦移植したりしました。業者さんにやってもらったところもありますし、中ぐらいから小さな木は自分でせっせとスコップで何本も掘り出しました。

移植したのは、モミジ、カエデ、ハルニレ、ヤマボウシ、ミズキ、ムラサキシキブ、アブラチャン、ヤマアジサイ、身元不明の木(笑)などです。それらを家が完成してから、必要な場所に植栽として自分で植え戻しました。また近くの造成地などで、掘り起こされて道端に捨てられている樹木を見かけると、いただいてきて植えたりもしました。

左はムラサキシキブ。右はおそらくハルニレ?。樹木が大きく育つことを願って他にもたくさん植えたが、何十年後か先の姿が楽しみ

当初は、軽井沢の生態系を壊さない植物であれば、造園業者に植えてもらうことも考えていましたが、結局このようにして、すべて身近にある自然の植物を自分で植栽することにしました。ナチュラルガーデンと言うと聞こえは良いですが、コストが厳しい私にとって、軽井沢の景観を壊さないと大そうなことを言いつつ、一番安上がりの方法でもあります(笑)。

– 具体的な外構について –

<外構の基本レイアウト>

さて外構作りですが、検討を重ね、最終的には下の図のような計画としました。まず外構の基礎となる土地全体の造成ですが、家を建てるために掘った土やクルマのアプローチのために切土した土などを、西側の庭と家の東側に盛土しました。掘り出した土を業者に処分を頼む方法もありますが、この土地のものはこの土地で活用したいと考えました。処理費用もかかりませんし・・。

結果としては、魅力的な地形になったと思います。傾斜地でありながら、小さい庭や来客用の駐車スペースを確保できました。

そして最終的に出来上がった造成の形に合わせ、階段や玄関へのアプローチを計画しました。

軽井沢の住宅
切土と盛土の量は、ほぼ問題なく収まった。造成から家屋まで一貫してデザイン出来たことは、なかなかできない経験と思う

<浅間石の石段>

軽井沢では、これまで述べたように浅間石が多用されています。昔からある家を参考にすると、石段は浅間石で立ち上がりを作り、その上面をコンクリートで平らにするというのが一般的のようでした。

現代では他にも外階段を作る方法はいろいろとありますが、私はこの従来の方法で作りたいと考えました。一番軽井沢らしいと感じたためです。

また我家はただの箱型であるため、石段は直線にせず、クルマのアプローチ同様、できるだけカーブを持たせたいと思いました。アプローチや階段にカーブをつけるとその場所にゆったりとした雰囲気が出るためです。

特に我が家の場合は、土地の上部から見たときに下方向に大きくカーブした道路が見えるため、このダイナミックな景観を生かすには、カーブしたアプローチや石段との組み合わせが効果的と考えました。

この土地を初めて見た時に気に入ったダイナミックな道路の景観に合わせ、上下とも石段にはゆるやかなカーブをつけた
雪の日の石段。森の動物たちも使ってくれているらしい(笑)

<石段と玄関アプローチ>

我が家の玄関は1階にありますが、1階は斜面の中間にあります。そのため、建築業者が考えていたのは、下のクルマのアプローチから玄関に上がる木製の階段のみでした。しかしせっかくの面白い地形を活かすために、私は玄関に短い橋を取り付ければ、下からも上からもアプローチが可能になると思いました。来客用の駐車場を上に造成できたこともあります。また郵便屋さんや宅配業者さんは玄関に近い上から来た方が便利だろうと考えました。

こういう発想になったのは、傾斜地に建つ家の玄関にブリッジが繋がっているという景色に、そもそも昔から憧れていたからだと思います。

工事はさすがに自分では難しいので、業者さんにお願いしました。その際に石段のカーブなどは、イメージに合うように自分で地張りをしました。またブリッジのデザインも自分で行いました。

この石段+玄関ブリッジは正解でした。いろいろな使い方ができ重宝しています。また個性や雰囲気が出たと満足しています。

造成したてで地面が寂しいが、現在は多くの植物を移植したり、自然の草木(あえて雑草とは言わない笑)が生い茂り、かなりにぎやか
左)上石段の地張り。地形に沿ったわずかなカーブだが、直線とは雰囲気が変わる。右)下石段の工事。出た土は他の場所の盛り土に活用

<玄関ブリッジの工夫>

玄関ブリッジですが、我が家にはやはり木の質感が合うと考え木製にしました。一方で木製の問題点は、将来的に劣化する、朽ち果てるということです。

その対策のため、特に痛むことが予想される床の部分には、防腐剤を充填した3寸角の木材を並べ、かつ腐った部材が出ても簡単に取り替えができるように、固定はやめて土台の上に置くだけの構造を考えました。また交換の際、加工が必要ないように、買ってきたままの定尺で使えるようにブリッジの長さを決めました。材木の左右はブリッジの柱で、前後はコンクリートで挟まれ、ズレない構造になっています。木の反りで歩くと少し浮いている感じの時もありますが、下に落ちることはないので、あまり気にしていません。

ブリッジは右の画像のように、床材を簡単に外すことができる。長さは定尺の4メートルで、交換の際は新しい材をそのまま置くだけ

<玄関ポーチの工夫>

ブリッジの先にある玄関ポーチですが、まず基礎を作る際に、土台となる壁を基礎の延長として同時に作ってもらいました。この土台部分は物置のような感じになるので、この中には外で使う道具類の収納などを想定しました。

このように玄関ポーチの構造は箱のようになるため、蓋にあたる床部分はコンクリートやモルタルを流して作ることができません。ブリッジのように木材を敷くことは可能ですが、玄関なので、ここは恒久的な材料で作りたいと思いました。

そのため玄関ポーチの床は、土間コンクリートの代わりに、出来合いのプレキャストコンクリート板を並べて敷き詰めました。その際、普通のコンクリート板では味気ないなと思い探したところ、表面に木目を転写したタイプのものがあったので、それを使用しました。コンクリート板は経年変化でいずれ表面が痛みますが、木目の模様があるので、劣化しても多少味になるかと考えました。実際そんな感じで現在表面劣化を続けています(笑)。

玄関の木目プレキャストコンクリート板。ブリッジの床材がまだ新品の色をしている。右はその裏側と横から見たところ。

<外構の追加施工>

その他に外構としては以下の図にあるものを追加施工しました。

いずれも生活していて不便なため施工したものですが、予算の関係もあり一度に工事したわけではなく、ここ何年かかけて、業者さんに頼んだりDIYしたり、少しづつ改善してきたものです。ご参考に説明したいと思います。

<家の周囲>

家の周囲は、土間コンクリート、浅間石の砂利敷き、浅間石と浅間砂利による階段の設置、東側の通路作りなどを行いました。

まず土間コンクリートは玄関ポーチ下の部分とちょうどウッドデッキの下にあたる部分に施工しました。これはこのスペースを物置きや作業スペースとして使用するのに、土のままや砂利では都合が悪かったためです。

浅間石の砂利は、家の周囲に設置しました。その際、土との境目には小さな浅間石を並べました。砂利まで浅間石にこだわるかという感じですが、軽井沢では浅間石の砂利は一般的によく使用されており、手に入りやすいため採用しました。

この浅間砂利の役割は、雨による泥跳ね防止です。我が家は落葉樹に囲まれており、落ち葉の量が半端ではありません。そのため雨樋はすぐ詰まってしまうので設置ができません。なので雨水が屋根から白糸の滝のように落ち、壁が泥だらけになってしまいます。この雨水を浅間砂利で拡散するわけです。

砂利を敷いてからは、壁への泥の飛散がいっさいなくなったので、雨樋がない場合、地面に砂利を敷くのは効果的と思います。浅間砂利が水分を含みやすく、また地面に浸透しやすいのが功を奏しているのかもしれません。

左)玄関ポーチ下に浅間砂利を敷いたところ。右)ウッドデッキ下の作業スペース、まだ浅間砂利を敷く前の状態。泥跳ねで壁が汚れている

家の西側には、浅間石と浅間砂利で階段を設置しました。わずかな斜面ですが、これがないと上に行くのが不便でした。

DIYで作った家西側の石段。短い階段でもあるととても便利

家の東側には自然の地形を利用して通路を作りました。自分でなだらかに整地したものですが、ここが開通して、我が家は家の周りをぐるっと一周回れるようになり、便利になりました。

通路を整地したばかりの状態。景色が味気ないので、作庭することにした
浅間石や植樹などにより作庭した玄関アプローチと整地した東側通路の入口付近。浅間石は息子たちが遊びに来たときに設置を手伝ってもらった

<やむなく石垣の設置>

石垣は当初予定していませんでしたが、クルマのアプローチ横の斜面が崩れてきてしまい、やむをえず設置することにしました。

普通の土壌であれば、おそらく問題はなかったと思います。しかしながら我が家の土地は、土の中に小さな軽石をたくさん含んでいます。浅間山の噴火によってできたものと思いますが、たとえば雨が降ると土分が流れ、砂利の部分だけが残るような特徴を持っています。上の写真で、土がボソボソしているのがお分かりになりますでしょうか? それらが土の中に含まれる小さな軽石の砂利です。

このような土壌のため、雨でクルマのアプローチ横の斜面の土が流れ、法面がどんどん崩れ出してしまいました。これを止めるのにどうしても土留が必要となったわけです。

単なる土留であれば、コンクリートや河川敷にあるような組みブロックでも施工できると思いますが、そこはやはり、どうせ土留を作るなら軽井沢伝統の浅間石の石垣で組みたいと思いました。

さて、この浅間石の石垣ですが、大きく言うと3つの方法があります。私が工事を依頼した業者さんの説明を基にまとめてみました。

▶︎「1.から積み」は、コンクリートを使わず浅間石を直接積んでいく方法で、浅間石自体の重さが重力擁壁となります。そのため、石の重量が必要で大きな石を必要とします。石は下から上にいくにしたがって、小さくしていきますが、一段づつ石の後方に合わせていくため、全体は後に寝た感じになります。この方式は浅間石同士の噛み合わせや角度を工夫しないと崩れてしまうため、経験のある職人さんの技が必要となります。

▶︎「2.練り積み」は、一段積むごとに裏側からコンクリートを流し、石を固定していくやり方です。コンクリートで結合された上に次の石を積むので、あまり寝かす必要はなく、立ち気味の施工が可能です。通常は浅間石の平坦な面を顔として揃えることが多く、写真の例は昔に組んだものと思われますが、顔を合わせながら、石同士の合わせ目も狭く、丁寧な積み方をしています。最近の練り積みはもっと隙間があり、ラフな仕上がりのものが多く見うけられます。

▶︎「3.貼り付け」は、コンクリートでできた壁に浅間石を貼り付ける方法です。半分にカットした石やスライスした石を使う場合もあります。接着効果のある材料で施工していきます。

実際に印象として軽井沢で一番多く見かけるのは、「2.練り積み」でしょうか。おそらく強度を確保しながら、スペース効率にも優れており、石選びに自由度があること、石積みを専門としない業者さんでも対応が可能というのが理由と推測します。

「1.から積み」は、昔からの地域に行くと見かけることはありますが、最近ではあまり施工されていないようです。理由は、コンクリートを使用しないためコストは抑えられるものの、大きな浅間石が手に入りにくくなっていること、またこの方法で石垣を組める職人が少なくなってきている、ということも聞きました。石垣をあちこち観察して回りましたが(ヒマ?)、旧軽井沢の裏の方や、南が丘の道路沿いなどに昔の職人が作った立派な「から積み」を見ることができます。

「3.貼り付け」はスペースに余裕のないところや、門柱の化粧貼りなどに施工することが多いようです。ぱっと見、雰囲気はあるのですが、どうしても石が小さめになり、平面的で、石の重量が下の石に乗っていないため、表面に貼り付けた感じは否めません。

この中で、私は迷わず「1.から積み」を選択しました。理由は軽井沢で一番伝統的な方法であり、立体的で野趣あふれた風情となるためです。また石と石の間がコンクリートでないため、隙間に植物が自然に育ちやすいというのも我が家のコンセプトには合っていると思いました。段数は圧迫感を避けるために3段としました。

ところが問題は、この「から積み」ができる業者さんがなかなか見つからなかったことです。「練り積み」はどこの業者さんでも可能でしたが、やはり「から積み」の実績がある職人さんはあまりいないようでした。そしていろいろ探した結果、やっと「から積み」ができる業者さんを見つけました。それが施工をお願いしたIG建設工業さんです。

実際の作業ですが、重機による基礎の掘り起こしが終わった後、「から積み」を社長自ら一人でコツコツと石の外形を整えながら丁寧にやってくれました。途中で各段ごとのライン出しや、使用する石選びなどの打ち合わせをしながら進めてもらったので、仕上がりには満足しています。また「から積み」にしてよかったところは、後ろに倒れるような角度になるため、斜面と一体感が出たことです。

左)土を掘り起こした後に砂利を敷き、その後1段目を置く。右)2段目が終わったところ。次の段の基準出しのため、水糸を通している
完成した石垣。砂利を敷いたわけではないが、土壌の関係で軽石の砂利が土の表面に残る。砂利を敷く手間が省けたとも言える(笑)

<カーポート>

カーポートも当初は予定していませんでした。そもそも景観の邪魔になるカーポートなど設置したくはありませんでした(笑)。しかし普段あまり使わない長距離用のクルマがあまりに汚れるため、やむなく設置することにしました。初めはボディーカバーを掛けていましたが、そのボディカバーもおそろしく汚れます。自然の中なのでいたしかたありませんが、落ち葉、鳥のフン、虫、ホコリ、コケ、どんぐりの高高度爆撃など、すさまじいものがあります。これから自然の中に家を建てられる方は、予算や場所がゆるせばビルトインガレージを絶対にお勧めします。我が家は予算も場所もありませんでした(笑)。

さてカーポート選びですが、何台用か?、積雪対応は?、デザインは?など決めなくてはいけないことが多くあります。我が家の場合は、まず1台用、積雪は1m対応、デザインは家の雰囲気に合うことなどを想定し探し始めました。軽井沢で積雪1mはオーバーな感じもしますが、住み始めてから50cmを超える積雪を経験したり、枯れ葉掃除でおそらく屋根を歩く必要が出てくることなどを配慮し、強度的な余裕をみて1m対応としました。

デザインですが、初めは「LXILのカーポートSC」のシンプルですっきりした感じが好みでしたが、価格が合わないのと、積雪対応が50cmまでだったことが引っかかりました。また我が家にはややスタイリッシュすぎるかな?とだんだん思い始めました。そして決定的だったのは、雨樋が柱の中を通っていて、枯れ葉の多い我が家では、枯れ葉用のフィルターを付けたにせよ、いずれ詰まってしまうのではないかという不安です。

そのため従来的な折半屋根タイプである「YKK APのジーポートPRO」を最終的に選択しました。これには積雪対応が1mのタイプがあり、とにかく頑丈なカーポートのようで、屋根の上に問題なく乗れそうなことや、将来もしかしてこの上にウッドデッキなどをDIYできるかもしれないとも考えました。もちろんメーカー推奨はしていませんので、あくまで私的な判断です。

またデザイン的にも、我が家の見た目は、何というか板張りの素朴な小屋といった感じですので、アルミのプレーンでスタイリッシュなものよりは、昔からある折半屋根タイプの方が雰囲気に合っていると思いました。

この「ジーポートPRO」は屋根の上の色にブラウンを選べたのも良かったところです。我が家は玄関など、カーポートの上から屋根を見る機会が多く、シルバーや白だと周りの風景と合わないと思いました。柱や部材の色はブラックとしました。ブラウンと悩みましたが、実はブラックでも周りの環境色の影響か、ダークブラウンに見えます。

そしてカスタマイズです(笑)。私の場合、どうしてもそのままだと満足できないことが出てきてしまいます。通常カーポートというのは図面のまま設置するというのがあたりまえですが、私はカーポート設置後の景色を確認するため、CGでシュミレーションをしてみました。それで感じたのは、図面のままのカーポートの高さでは、家との見た目のバランスが悪く、カーポート自身も不安定なプロポーションで、どうもしっくりこないということです。そのため柱の高さをカットし、低くすることにしました。業者さんに聞くと可能とのことでした。

通常カーポートは柱の高さにかなり余裕を持たせてあります。しかし現実的なクルマのサイズや、仮にバックドアを開けた状態を想定しても、通常の使い方であれば300mm程度は低くできるのではないかと思いました。下はその際に現在のクルマを前提に、寸法を実際に検討した図ですが、将来的にクルマを買い替えても問題はなさそうでした。例えばジープ・ラングラー(ラングラーほしいのか?)にルーフキャリアを装着しても収まりそうでした。柱は低い方が強度的にも防汚的にも有利と思います。

ただしこれもメーカーは推奨していないので、あくまでも私の勝手な施工です。もしカットされる方は自己判断でお願いします。

また前側の柱は100mmまで前方に移動できるようなので、100mmめいっぱい前方に移動しました。これはクルマの横を通やすくするためです。少し説明すると、クルマの前後は上から見るとスボまっていて、柱ができるだけ前方や後方にあった方が、柱とクルマの隙間が広くなり、人が通りやすくなります。

実際の地形では、地面と屋根が 平行に2° 程度前方に傾斜している。図ではその傾きは省略。A〜Fはクルマの原図のもので意味はありません
柱の高さは、カーポートの屋根ができるだけ家の基礎の高さで収まって見えるように、現場でさらに検討し決定した。見た目としてはもう少し低くしたかったが、使い勝手を考えると限界

– 具体的な植栽について –

<植栽のレイアウト計画>

さて、次は植栽のお話しです。

山林に建築をしようとする場合、どうしても必要になるのが伐採です。また考え方にもよりますが、その後必要となってくるのが植栽です。我が家は始めにご説明したように、植栽に関しては、もともとこの土地に生えていたものや、近隣で廃棄されている地場の植物を使い、軽井沢らしい自然な雰囲気にしたいと思いました。

この伐採と植栽について、私が感じていることを少しお話しさせてください。

実際に軽井沢に暮らし始めると、別荘を建てた後、敷地にある何十年もかかって大きくなった樹木を簡単に伐採してしまうお宅が多いことに驚かされます。我が家の周りでもそのような家が何軒かあり、理由を聞いてみると、落ち葉の世話が大変とか、樹木がそもそもあまり好きではないとか、なぜ軽井沢に住宅を持ったのか? と不思議に思うことがしばしばあります。

大袈裟な言い方になりますが、私は樹木を軽井沢の財産と考えているので、このような場面に遭遇すると、とても残念な気持ちになります。切られている木に心の中で「せっかくここまで大きくなったのに、何もできずスマナイ・・」とつぶやいてしまいます。

偉そうなことは言えませんが、たとえ他人の樹木、特に何十年もかかって奇跡的に育った大樹は、周りの人も大事に思っているということをあらためて考えてみてほしいと思います。

このような理由から、私は自分の家を建てるために、どうしても伐採しなくてはならかった分、将来大きくなる樹木たちの苗木をできるだけたくさん植樹したいと考えました。

下がその具体的な計画図です。かなりの数を植栽する計画になっていますが、最初からすでに大きい樹木はなく、自分ひとりで植えられそうな、高さ2m前後の苗木が主となります。特に意識したのは、伐採した数よりも植樹の方を多くしたかったということです。

だいぶ込み入ってますが、計画は計画で、この通りできたところも現場で変更したところもあります。具体的に植栽を進めるにあたっては次のことに留意しました。

1. 中木から高木は将来の樹木サイズを想定して植える。

現在は小さな苗木でも、将来大樹になる木があります。例えばハルニレなどで、幹の直径50cm、高さ30mをゆうに超えます。中軽井沢のハルニレテラスに行くと、そういったハルニレの大樹を見ることができます。またムラサキシキブやアブラチャンなどは中木ですが、場所によりかなり大きく枝葉が広がって育つものもあります。これらを考慮して植える必要があります。まぁ、これらがそこまで成長する頃には、私はいないかもしれませんが(涙)、後の人が困らないようにしたいと思いました。

2. 低木にはヤマアジサイを活用する。

軽井沢で貴重となる低木ですが、我が家はヤマアジサイで統一するこにしました。敷地に多く生息しており、植樹に適していたためです。これは石段の横や通路の入り口など、将来狭くなってはこまるところに、単独、あるいは並べて植えました。我が家の土地は湿気が多く、ヤマアジサイに向いているようです。

3. グランドカバーには、シダ類とコケを利用する。

我が家の土地は、シダ類にも向いているようで、敷地に大小のシダ類が多く生息しています。またコケ類も見受けられます。グランドカバーにはこれらを移植して活用することにしました。シダとコケが加わると、急に軽井沢らしくなります。このうちコケですが、敷地に生えているもののみだと採取に限界があったため、別荘地の管理事務所に相談して、道路の隅に生えているコケをもらうことにしました。コケがあるとクルマがスリップするので、どうぞ、どうぞということでした。このようなコケですので、杉ゴケなどの高級なものはなく、ほぼすべてハイゴケです。このコケは丈夫ですし、ゴソッと大きなサイズで採取できるので移植には重宝しました。

実際の植栽は次のような感じになりました。

来客用駐車場の斜面。木の間隔は将来のサイズを想定して植えた。木は土留と、駐車する際に斜面境界を知る目印の役割もしている
石垣の上は土留の意味もあり、アブラチャンを1列に植えた。将来どのように見えるか楽しみにしている
左)下石段の横。このアブラチャンは将来シンボルツリーになるかもしれない。右)道路側は崖の土留と目隠しの役割で植樹した
軽井沢らしいシダ類。左はオシダで大きなもの。文献によると、明治の頃から軽井沢では庭の観葉植物としてシダを楽しんでいたようだ
軽井沢の住宅
石段の両脇にはヤマアジサイを植えた。将来のサイズを考え、石段からやや距離を置いて植えている。カーポートの真ん中あたりに見えるのは、おそらくハルニレ。大樹になることを願って、構造物から離して植えている
作庭のコンセプトは、せせらぎ。整地した通路をせせらぎに見立て、水の流れを感じるように浅間石やシダ、コケを配置した
せせらぎ感ありますか? 浅間石とミズキの幹下にある低いアブラチャンは、この土地にもともとあったもの。自然に育ったものは一味違う
玄関を出たところの景色。玄関ブリッジはせせらぎに掛かる橋というイメージにもなっている

次は家の建築経過と、業者選びの注意点について話したいと思います。

10. 軽井沢移住 Vol.10に続く。

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