– 軽井沢の住宅建築 1階のレイアウト –
ご訪問いただきありがとうございます。
2019年に、長野県、軽井沢町に移住した“ぐじ”と申します。
vol.7に続き、最終建築プランのお話しです。
<1階のレイアウトについて>
次に1階のレイアウトですが、玄関や、洗面、浴室、寝室といった設備を配置しました。
こちらもレイアウト図をもう一度ご覧ください。
続いてこの階も窓の考え方から説明したいと思います。
振り返ってみると、どうも窓のレイアウトから我が家は、決まっていったんだなぁ、とあらためて思います。
1階の窓ですが、2階同様、外部との繋がりを重視してサイズと位置を決めました。
まず東側ですが、そこは道路の下の方になるので、大きな窓を設置しても、結局盛土した土が盛大に見えるだけのスペースです。そのため、ここには大きな窓を設置せずに、幅1800mm×縦550mmという高さを抑えた横長の窓としました。幅を1800mmも取ったのは、2階のちょうどこの位置に、横1800mm×縦1500mmという窓があるため、窓幅を合わせることにより、外観上きれいに揃って見えると考えたためです。
この窓を揃えるというのは、外観の印象でとても大事なことと考えています。というのは、日本の家は内部の都合で窓位置を決め、結果として、外部から見た時に、窓がバラバラな印象になってしまうことが多いと感じるためです。そのため外観からもバランスの取れた窓のサイズと位置にしたいと考えました。
またこの横方向の窓の長さを生かすために、この窓のところにも2階と同じような横長のカウンターテーブルを造作しました。
しかしながら、造作が終わってこのカウンターテーブルのところに座ってみると、どうもこの窓から見える景色が、盛土のままであまりに味気なく、住み始めてから、浅間石とシダ、苔などを移植し、軽井沢らしい風情を感じるように、自分で手を加えました。作庭と言うと大袈裟ですが、襖絵のように、横に広がりを感じる和の雰囲気となり、なかなか落ち着く景色になり気に入っています。
次は南西にある寝室の窓です。
寝室の窓も、2階の南東側の窓ふたつと同じ位置にレイアウトしました。ただし高さ寸法は2階の窓より低く1000mmとし、位置はできるだけ壁の上のほうに設置しました。寝室のため、窓が低い位置だと落ち着かないのでは?と考えたためです。高さ寸法に関しては、もう少し低い方がプロポーション的にかっこいいかとも悩んだのですが、大きくても値段があまり変わらなかったことと、少しでも窓面積が多い方が寒い軽井沢では貴重な日当たりに有効なのではないかと考えました。また冬場に木々の葉っぱが落ちた後、ベッドに横になると星空が見やすくなるのではないかと考え、高さは1000mmにしました。
窓を薄くカッコよく見せたい時は、ロールカーテンを下ろせば良いので、結果、これでよかったかなと思います。
このように寝室の窓は、カウンターテーブルのある東面とベッドの頭側がある南面に設けましたが、この家で一番景色の良い西側には、あえて窓を設置しませんでした。
理由はどこかにワードローブを設置するスペースが必要であったためで、ここは窓をつけずコストダウンと割り切りました。ワードローブを東に持っていくレイアウトもあったのですが、模型で検討すると、1階の西側に窓を設置した場合、家の外観が窓だらけで見た目のバランスが悪くなることが気になりました。まぁ、外観をここまで気にする人はいないと思いますが、カーデザイナーの職業病です(笑)。
ついでにお話しすると、私は基本1人暮らしですが、見た目の収まりが悪いため、画像のようにベッドを2台揃え、それぞれを窓のセンター合わせで置いています。ベッドボードのパイン材は家を作った時の建材のあまりを残しておいてもらい、DIYをしたものです。
それとベッドの間にある小さなチェストは、無印良品の引き出しを自分で改造して取り付けたものです。このチェストには足がなく、ベットの下引き出しを出した時に当たらないようにしてあります。つくりとしては、ふたつのベッドの間に2X4材を渡して、その上にチェストが乗った形になっています。
次は浴室の窓について説明します。
浴室は家全体のコスト配分で言うと、大型トリプルガラス窓の次にお金をかけた部分となります。なにしろここは横浜の家でできなかったことのリベンジ案件でもあります。
何が一番リベンジだったかと言うと、大型の洋バス(浴槽)を設置することでした。
またまたドイツの話になって恐縮ですが、現地で気に入ったもののひとつが洋バスでした。日本の浴槽と洋バスとの違いは、簡単に言うと、日本の浴槽は足をかかえるように浸かるため、高さが必要なもののスペース効率が良い。一方洋バスは体を伸ばして入るため、高さは低いが、設置場所の長さが必要になるというところです。
日本に住んでいた時は洋バスに浸かったことはありませんでしたが、ドイツで現地サイズの洋バスに浸かると、背がそれほど高くない私は、お湯の中で頭だけ出して全身を伸ばし、寝るような姿勢になります。
この姿勢が極めて快適でした。私はお風呂でボーッと考え事をすることが多いのですが、それにぴったりでした。バスタブが現地サイズで大きかったこともあると思います。
このバスタブを最初の横浜の家で再現したかったのですが、ユニットバスでは実現不可能で、造作にしなければならず、コストが折り合いませんでした。これを今回はあきらめずに実現しようと考えたわけです。
具体的に使用した浴槽は、カルデバイというドイツ製のホーロータイプのもので、国産の取手や座面がついているようなものではない、ただの浴槽という一番シンプルなものしました。そのため値段も国産のものとあまり変わりません。
ただサイズだけは現地で経験した大きさがほしくて、ショールームで横になって試して、最大長の1800mmのものにしました。
話が洋バスに行ってしまいましたが、窓の話に戻します。浴室はこの洋バスの寝るような姿勢で、めいっぱい外の景色を楽しみたいと考えました。
そのため浴室の窓は、視線方向の壁を全面テラス窓にし、かつ、外壁に引き込みで全開できるようにしました。つまり窓を全開にすると、半露天風呂となります。また全開にした窓の外には、2階と同じ小さなウッドデッキを設けました。季節が良い時は、ここにデッキチェアを置いて、裸でくつろげるようにと考えたためです。ただし夏でも寒い日が多い軽井沢では、まだ実現できていません。道ゆく人の目障りとなっていないので、良いことかもしれませんが(笑)。
この半露天風呂ですが、これはもう大正解でした。リビングのテラス窓はあまり開ける機会がないと、設定しなかったわけですが、この浴室の全開にできる窓は、浴室入り口の扉を閉じれば、湿気も何も関係ないので、緑の夏、紅葉の秋、冬の雪の日にさえ全開にして、露天風呂気分を味わっています。
それと、ここのテラス窓ですが、ここは北欧製品がなかったため、LIXILのアルミサッシ、ペアガラス仕様となっています。断熱効果は落ちますが、浴室なので、入り口側の扉を閉めれば良いと考えました。また国産のため、ここだけは網戸が付いており、これは夏場の換気に役立っています。
次は玄関の窓の話に移りたいと思います。玄関には2階のテラスドアと同じものを使用しました。玄関ドアとしては小さめですが、トリプルガラス仕様の木製サッシです。玄関に窓のような透明なドアというのも珍しいと思いますが、そもそも別荘地で人が少ないことや、道路に面しておらず、周囲との高低差もあるため、視線は特に気にならないと考えました。それよりも明るい玄関とするための採光と、ガラス越しに室内から見える景色の方を優先しました。防犯の面でもトリプルガラスは有効だと思います。
その景色の見え方は、東側のカウンターテーブルのあたりから、玄関を見た時に、視線がスッと一直線に外に抜けるように考えました。玄関は風除室を兼ねているため、手前に引き戸がありますが、それもガラスが入っているタイプにして、抜け感を大事にしました。
1階の窓を設定するにあたっては、とにかく、この抜け感を意識しました。というのは、1階がいろいろな機能を持った部屋の集合体であるため、小分された部屋で狭く思えてしまうところを、少しでも広く感じるようにしたかったためです。
この考え方から、玄関以外も、できるだけ遠い位置から一直線に視線が抜けるように工夫しました。
抜け感を大事にしたところをレイアウト図で示しますね。
例えば玄関から入って来ると、右方向に浴室がありますが、普通の壁で仕切らずに、フィックスのガラスを設け、さらに浴室もガラスの引き戸として、視線が浴室のテラス窓越しに抜けるようにしました。これは玄関で靴を履く椅子に座った時にも、気持ちの良い眺めとなっています。
本当はよくあるように、玄関を開けた先に視界の抜けがあると良いのですが、家の外観上、バランスの悪い位置に窓が必要になるため、それはあきらめて、将来的に玄関入った正面には、絵や鏡を置けば良いかと考えることにしました。
その代わりに浴室方向の抜けにしたわけです。
他にもトイレの窓は入口を引き戸にし、通常ドアを開けた状態をデフォルトとして考え、反対方向から見た時に、一直線に視線が抜けるようにしてあります。
ただ、このトイレの窓から見える景色も、当初は単なる盛り土でしかなかったので、家が完成してから、ここも自分の敷地に生えていた小さな山の木や石を移植し作庭しました。これから木が大きく育つのを楽しみに見る窓でもあります。
その他、1階の窓レイアウトの特徴としては、北西側は、ガラスの玄関ドア以外は割り切って窓というものを付けませんでした。景色の良い2階に窓のコストをかけたかったのと、北側に窓を設けない方が、断熱効果上も有利ではないかと考えたためです。
洗面所もこの窓を付けなかった方角にありますので、多少暗いかと思います。本当は自然光が入ると気持ちが良いのですが、1日のうち、どれだけ洗面所にいるかです。滞留時間で考えれば、あえてコストをかけなくて良いかと割り切りました。いずれにしても夜は明るい照明が必要となります。
また浴室も大きなテラス窓が南西側にあるので、北西側は窓無しとして、シャワーなどを取り付けるスペースとしました。
この1階北西側に窓がないレイアウトを模型で検証しましたが、窓と言えるものは、2階の幅の狭い窓のみになるため、要塞のような見た目でカッコいいなぁと思いました。特にこの面はアプローチから上がってくると真っ先に見える、家の顔といった大事な外観となります。そのため、むしろ「見た目がカッコ良くなるので、窓はなくてもいいかぁ」と決めたフシもあります(笑)。
ちなみに自動車のデザインでは、窓が小さいと、“クライスラー300C”のように、クルマがどっしりとして、カッコ良く見えます。パネルの面積が多くなるため、このようなデザインを“パネリッシュ”と言ったりしますが、上下に幅の広いサングラスをかけるより、シュッとした狭いものをかけた方が、やや悪そうな雰囲気になるものの、シャープでカッコ良いイメージになるのと同じような理屈だと思います。
– 1階の仕様について –
さて、窓の話は終わりにして、1階全体の仕様の話に移ります。1階は中央の強度壁を挟んで、東、南、南西側は寝室やワードローブスペース、北西側に浴室と洗面所、北側に玄関をレイアウトしました。
<1階廊下はアートスペース>
このうち1階の廊下はアートスペースという扱いにしました。同時にこのスペースは壁の色も濃紺にし、薄暗い感じにしてあります。これは玄関から入り、2階に上がる前に一旦暗い空間を通ることにより、2階の開放的な景色をより一層強調して感じるようにするための工夫です。その2階に向かう廊下の壁にはアート作品?を飾りました。
<寝室はオープンスペース>
そして寝室は通常壁で囲って部屋とするのが普通ですが、我が家は壁を造らず、プライバシーが必要な時はカーテンで仕切るようにしました。ちょうど上の画像の白いカーテンがその間仕切りです。これは小さな家なので、空間の広がりや、すべての窓が見渡せることによる解放感を優先したかったためです。
もし仮に将来、壁が必要になった場合は、このカーテンで仕切る所に壁を設置したり、さらに寝室の中を区切ったりすれば良いと考えています。
ただし、この広めの寝室のせいで、問題が出たところもあります。それは家の構造計算のせいもあると思いますが、この上にあたる2階のダイニングキッチン周りを歩くと、振動が大きく、食器棚がカタカタ鳴るということがおきてしまいました。そのため、完成後に柱で補強するハメになりましたが、手抜き工事でなかったことを祈ります。
この補強柱はデザイン的におかしくないように何とか無理やり工夫しましたが、もしこのように広めの空間を作る場合は、上層階への影響など要注意だと思います。
<ツートーンの壁色>
それと、お見せしている画像を見ていただくと分かると思いますが、1階は廊下以外も壁の色を白と濃紺のツートーンにしています。これは小さな家なので空間の印象に変化をつけるためです。
しかしこの濃紺色は水性の艶消し塗装のため、傷やゴミが目立ち、当初洗面所も濃紺だったのですが、飛んだ歯磨き粉があまりに目立つため、後でDIYで白に塗り直しました。皆様も壁の色にはお気をつけください。
<ガラス、鏡の反射効果>
この玄関や洗面所周りは、それぞれ狭い空間ではありますが、ガラスと鏡を多用した反射効果を利用して、少しでも広く感じられるように工夫しました。結果、視覚的にも美しく気に入っています。
次は外構と植栽の話をしたいと思います。
9. 軽井沢移住 Vol.9に続く。