– 軽井沢の住宅建築 2階のレイアウト –
ご訪問いただきありがとうございます。
2019年に、長野県、軽井沢町に移住した“ぐじ”と申します。
vol.6に続き、2階の最終フロアプランと詳細仕様のお話しです。
<2階のレイアウトについて>
これまでお話ししたように、私の場合は、「土地の個性を活かした造成」 → 「家を建てる場所の決定」 → 「家の外観の決定」 → 「切り取りたい景色の見極め」 → 「窓の位置とサイズ決め」 → 「家具の配置と寸法出し」、という順番で家づくりを考えました。
造成から家具まで連続させてデザインできたことは、とても良かったと思います。そして窓のレイアウトを基準に、さらに2階全体のレイアウトを進めました。
まず正方形プランの中央に強度壁があり、景観を優先に、北東にワーキングデスク、南東にキッチンとダイニングテーブル、南西にカウンターテーブルを置きました。また強度壁を挟み、北西側をリビングとしソファーを置き、北側の隅に小さなパントリーを設けました。2階のレイアウトをもう一度お見せしますね。
つまり景観の良い東、南東、南西に日中の大半を過ごすスペースを置いて大窓から外の景色を楽しめるようにし、反対の北西は、最小限の窓を配置して、ソファーやテレビのあるくつろぎスペース、エンターテイメントスペースとしました。
そのダイニングキッチン側とリビング側の考え方は次のようになります。
<ダイニングキッチン側>
ダイニングキッチン側のレイアウトは、まず使いやすい動線を確保することにしました。家の真ん中に階段と強度壁があるため、動線としてはそれが基準となりますが、回遊や窓からの景色などを考慮し、結局、PC机は東の角の窓際、その机とキッチンで併用するラック(サイドボード)をその中間に置き、それと平行にキッチン台とダイニングテーブル、西側窓のカウンターを設置することにしました。
単に平行に並べずに、もう少し面白いレイアウトもあったのですが、ダイニングテーブルのどちら側に座っても景色を楽しめるようにするにはこのレイアウトが一番良いように思いました。
ダイニングテーブルは、普通どちらかの側が窓に向いているなど、片側が特等席になりがちです。それを避け、そこに座る全員が景色を楽しめるようダイニングテーブルは横の大窓のちょうど真ん中に置きました。またキッチン台も同様に大窓の中心にキッチン台を合わせました。キッチンに立つと、すぐ横にかなり低い位置から高いところまで窓がありますので、まるで外にいるような気分になります。
ただ、これらは先に窓の位置が決まっていたのではなく、この室内のレイアウトに合わせ、窓の位置を決めたというのが実際です。このあたりが自分でデザインして良かったところで、良い景色のポイント、必要な家具の寸法やレイアウト、窓の大きさや位置を、プライオリティをつけながら関連づけて設定することができました。
<リビング側>
同様にリビング側も家具を基準にレイアウトを決めました。基準になったのは、前にもお話した離婚して私が引き継いだ大きな組み合わせ式のソファーです。できあいの部屋に、この大型のソファーをうまくレイアウトするのは難しいと思いますが、先にソファーをどう置くかを決め、納戸や窓の位置とサイズを決めました。この先ソファーを買い替える場合はどうするか?ということはありますが、このソファーは革製でしっかりしてますので、私の年齢だと、おそらくもう買い替えはないと踏みました。やや悲しいような・・(笑)。
ただし、これも以前お話したように、西側の大きなテラス窓は、将来的なレイアウト変更の可能性と解放感を考慮し、ガラスドアを左右対称に設置しました。このテラス窓の脇にはデイベッドとして使用するソファーが置いてありますので、向かって右側のドアは扉としては有効ではないのですが、夏場暑い時の換気には役立っています。
そして、このソファーのレイアウトの際に気をつけたのはテレビと窓の関係です。よく日中外の景色が反射してテレビがよく観えないことがありますが、この反射を避けるため、画面の向かい側には窓を設置せず、大きな壁面のみになるよう気をつけました。
またテレビの方はスペース効率を上げるためにテレビ台は置かず、強度壁に直接取り付けるようにしました。そのためテレビ用のすべてのケーブルを壁の中に通すよう、当初より隠蔽配線用のチューブを埋め込みました。
これにより、テレビ周りをだいぶスッキリさせることができたと思います。我が家の場合は建築家が入っていないので、このような細かいこともすべて自分で考えなくてはなりません。
この隠蔽配線は壁の横から出るようにし、その出口にはオーディオラックを設けました。このラックは無印良品の「ステンレスシェルフユニット」の帆立ユニットをサイドに使用しましたが、棚板は階段の手すりから強度壁までの長さに合わせた板をDIYで製作し、無印のオリジナル金具に止めました。
軽井沢の夜は店じまいも早く、外にはあまり楽しみもないため、このような娯楽スペースを設けて置くのも大事なのではないかと思います。
– 2階の仕様について –
<造作の考え方>
次に2階の仕様について説明したいと思います。
我が家はこれまでお話ししたように、性能は守りつつコストダウンをしたかったため、基本的に「造作」というものを極力行なっておりません。これにはドイツで暮らした家の考え方も影響していると思います。
日本の注文住宅の場合、クローゼットや各種収納などを造作で作るというのが昔から一般的かと思いますが、ドイツの家は何も造作を行わず(というか造作という概念がありません)、各部屋は空間のみというのが普通でした。
例えばイケアの家具には、日本ではこれまであまり普及してこなかったシステムワードローブや大型収納家具が充実しています。これはドイツに限らずヨーロッパの家が、どこも同じように空間のみで家が建てられていて、そこに収納を確保するために製品が発達したということだと思います。
この収納に対する考え方の違いは、「暮らしの習慣」といったものから来ている気がします。日本の住居には布団をしまう「押し入れ」が造作として作られるのが当たり前でした。そのため家の中に収納を作るのは、大工さんにとってあまり違和感のないことだと思います。
一方ヨーロッパでは、石造りの家が基本だったせいか、昔から家は大工が作り、家具はすべて家具職人が作ります。押し入れのような、住居と家具の中間のようなものはあまり存在しません。大型のシステムワードローブがなかった時代にも、押し入れがないヨーロッパでは単独の大型ワードローブが存在していました。
もちろん日本にもタンスはありますので、こまかな収納になると大工ではなくて家具職人が作るのは同じかと思います。しかしタンスと言っても、日本のタンスは昔から家具として独立した個性を持っているのに対して、現代的なヨーロッパのタンス(ワードローブ)は、壁の一部になるようにデザインされています。つまり家の一部になるようにデザインされているというのが大きな違いです。
日本ではこの家の一部になる建築に付随した部分を「造作」と呼び、現代的なモダンな建築であっても、特別に工夫した収納や家具の用途に近いものを住宅の一部に造りつけることは多く、ある意味日本住宅の伝統であり、特徴なのかもしれません。
しかし私のように予算を抑えたい人間には、コスト高になる造作は極力やめ、とにかく空間を作って、そこに既製品を安く見栄え良く自分で設置する、というのが一番コストメリットがあると思いました。
それと軽井沢は湿気が多いと聞いていたので、扉で閉めきらずに、できるだけ棚のようなオープン収納にした方が良いのではないかということも同時に考えました。
<納戸(パントリー)>
そのため我が家に造作と言える作り付けの収納らしきものは、真北にある小さな納戸(パントリー兼用)のみです。それも内部には棚など作らずに、サンワカンパニー製の「ノッポ」という扉のみを付けた収納スペースとなります。
そしてこの中には棚の代わりに、「IVAR」というイケアの組み立て式木製ラックを置き、コストダウンをしました。
このIVARを私は大変気に入っており、ドイツ時代からかれこれ30年以上愛用しています。木製のため切ったり繋いだりが簡単で、好きな塗料で仕上げられるところもDIYに向いています。ずっとIVARを使い続けてきたので、棚板の横の金具が一時期グレーのプラスチックになってしまった時は非常に残念でした。しかし最近また30年前のような金属製の板金になり、質感が戻ったので良かったと思っています。
日本製だったらあきらかに樹脂の方が品質を維持しやすいので、また金属に戻すということはありえないと思いますが、樹脂製は強度不足だったのでしょうか? あるいはイケアの商品企画やデザイナーの中に、コダワリがある人がいたのでしょうか? いずれにしてもうれしい仕様変更です。IVARはこうでなくては!。
このIVARは簡単に分解もできるため、ドイツから日本に戻った際は、現地で使っていたIVARを大量に持ち帰り、すべて横浜の家にアレンジして使用しました。それでも足りないため追加購入したかったのですが、当時イケアは日本に本格的に参入しておらず、残念ながら手に入りませんでした。
その後しばらくしてイケアが日本に出来て喜んだのですが、当初ラインナップにIVARは入っておらず、「えーっ!なぜに?」とだいぶがっかりしました。しかし程なくしてラインナップに加わり、「やっと来たな、IVAR!」と飛び上がって喜びました。そして現在、自宅に限らず大学の教員室や研究室でも存分に活用させてもらってます。
<東側大型ラックと冷蔵庫>
他に造作を行わず、自身で設置しコストダウンしたのは、東側の大型ラックや、キッチンとPC机を分けるサイドボードなどがあります。
こちらはIVARではなく、無印良品の「ステンレスユニットシェルフ」で組みました。理由は、すべてIVARだと室内の雰囲気がウッディーすぎて、コンセプトの「インダストリアル」に合わず、重い印象となるためです。
私が組んだ当時のステンレスユニットシェルフは、ボックスユニットなどの種類も豊富で、かなり自由な組み合わせができました。今は組み合わせるボックスの種類が激減してしまい残念ですが、最初に一気に揃えておいて正解でした。
このシェルフですが、部屋が広く見えるため、私は床から天井まで通すのが好みで、大型ラックにはこのシリーズの一番背の高いものを使用して、さらに天井までの空きスペースを、オプションのツッパリ金具で固定しました。この金具はもともと地震対策用なので、付けることに意味はあるのですが、こんなに沢山使用する必要はありません。しかしながらここは見た目の特徴をデザイン的に出すため、各帆立すべてに取り付けました。また一番上部の空きスペースにはライン照明を入れようと考え、スイッチに連動して電源が入るコンセントを天井に設置しておきました。
この大型ラックは間取りを考えていた時から正確なサイズを出し、必要な壁のスペースを確保しておきました。位置としては東側の壁にあるふたつの窓の間にバランスよく設置することにしました。大型ラックの下側の引き出しには食器類、上には保存しておきたい空き箱や、置き場所がなくて困っていた未組み立ての大型プラモデルなど、万が一にそなえ軽いものを収納しています。
そしてこのラックを計画した際に悩んだのが、冷蔵庫をどこに置くかです。これはいろいろ考えた結果、写真のようにユニットシェルフの中間に挟むようなカタチで設置することにしました。その際、冷蔵庫は無印良品のシェルフと幅が合いませんので、この冷蔵庫のところだけは、オリジナルのステンレス棚は使用せず、冷蔵庫の幅に合わせた板をオーディオラック同様にDIYで切り出し、無印のオリジナル金具に取り付けました。そのため冷蔵庫上部の棚のみ木製になっています。
また冷蔵庫はシェルフよりも奥行きがあり、私自身このように冷蔵庫を置いた例を雑誌やテレビでも見たことがないので、いったいどんな見栄えになるか?と心配でしたが、冷蔵庫の扉もステンレス製を選び質感を合わせたので、出っぱってはいるものの、結果としては馴染んだ気がします。ただ一人でこの設置をするのは、シビアな調整が必要で結構な大仕事でした。
またこの冷蔵庫の位置は、本来階段の中心と合うとよかったのですが、窓とシェルフユニット全体の位置関係で、階段の中心からはわずかに北側にずれています。それでも1階から階段を登ると、この冷蔵庫がドーンと出迎えてくれるので、ウェルカム冷蔵庫と呼んでいます(笑)
<PC机とキッチン間のサイドボード>
他に2階で収納を設置したところは、東側のPC机とキッチンを分けるサイドボードです。このキャビネットも無印のステンレスシェルフユニットを使用しました。当初ここも天井まで通したものを一旦設置しましたが、実際にやってみると圧迫感が強く、ここは高さを抑えることにしました。
このサイドボードのPC机側は、雑誌やiPad立てで、扉を開けるとファイル収納。キッチン側は普段使いの食器の引き出しと、連結したキャビネットを左右で向きを変え使用しています。またPC机側のキャビネットの裏側には、DIYで食事用トレイが4枚置けるように工作しました。トレイの木目はキャビネットと同じオークで合わせてあります。それと帆立の上部は棚を設置せず、後ろ側に物が落ちないようにホームセンターで購入したワイヤーを横方向に通しました。
<システムキッチン>
次にキッチンですが、サンワカンパニーの「プレーンKミディアム」のブラックを選びました。サイズは、長さ2100mm X 奥行き650 X 高さ850mmです。場所的にペニシュラン型に見えますが、ウォール型の背面に室内で使っているパイン材を後で貼ったものです。本当はステンレス製の「グラッド45」が好みでしたが、ここはコストダウンしました。結果としては特に見た目も問題ありませんでした。作業するスペースの高さがやや低いと感じたため、特注で作ってもらったヒノキのマナ板を引き詰めています。
他にもこのキッチンは自分なりにモディファイしていて、無印のキャビネット同様に片手で引きやすくするための取手を付けたり、背面に貼ったパイン材にイケアの「クングスフォルス」という壁面収納用の格子パネルを、物が落ちないように取り付けたりしました。ついでに天井より下げる形で水切り棚などもDIYしましたが、こちらは「デザインDIY」のカテゴリーでいつか制作方法も合わせ、ご紹介したいと思います。
換気扇は「アリアフィーナ」の薄型のもので、ステンレスの素材感で他と統一しました。テレビを観ていたら、この換気扇は「大豆田とわこと三人の元夫」で、とわこさんがマンションで使っているものと同じでした。ただ、とわこさんはこの薄型のかっこいい換気扇の上にものをいっぱい置いていたので、置きたくなる気持ちは分かるけど、「建築家として、それはどうなの?」と思いました(笑)。
換気扇はインテリアとして邪魔に見えるため隠す人も多いですが、「インダストリアル」コンセプトとしては、私はむしろ目立たせた方がカッコ良いのではないかと思いました。特にキッチン周りは、この換気扇含め、ステンレスで質感を揃えるのは容易なので、統一感を出しやすいと思います。
<ダイニングテーブル>
ダイニングテーブルは既製品を買わず、天板は古材を買い出しに行ってDIYで作りました。サイズは、長さ2100mm X 奥行き800 X 高さ710mmです。長さはキッチンに合わせました。古材は100年ほど経っているもので、アメリカの納屋で外壁に使われていたそうです。釘穴があったり、欠けたり反ったりしていますが、味があり気に入っています。
この板は、こういった材料を輸入している栃木県の業者さんのところに買い出しに行き、1枚1枚吟味し選んだ板を自分で貼り合わせたものです。まだ製作する道具をあまり持っていなかった頃で、大変苦労しました。これもいずれ製作過程を「デザインDIY」でご紹介したいと思います。それとテーブルの表面は耐水性を高めるため、ガラス塗料を塗っています。クリア塗料と違い、自然な仕上がりで塗ってあることが分かりません。下にこの古材を購入した業者さんのリンクを貼っておきます。
<PC机周り>
PC机周りですが、まずPC机はダイニングテーブルと同じ古材を切り出し天板を作りました。脚はビンテージぽいデザインですが、現代のアメリカ製品で、高さ調整がある程度できます。机の上にはIVARを乗せ、書類などを取り出しやすくしました。
<西側カウンター>
西側の窓のところには、カウンターを作り付けました。我が家の数少ない造作のひとつですが、これは既成の家具ではぴったりのものがないためです。サイズは、長さ3300mm X 奥行き450 X 高さ710mmとかなり横長です。ゆくゆくは右下のスペースに、バイオ燃料の暖炉を設置しようかと考えています。
<照明について>
照明ですが、我が家の建築を請け負った業者はすべてを一人でやっていて、積極的に照明の要望などをまとめるようなことはしないため、しょうがなく自分からこうして欲しいという仕様を伝えることにしました。普通はここまで施主が気を回してやることはないと思います。下はご参考にその時の仕様図です。
我が家の照明ですが、真上から室内を照らすシーリングライトというものは使用せず、すべて間接照明、もしくはアームライトとしました。間接照明は暗い印象を持たれるかもしれませんが、私には十分な光量に感じます。また取り付けた照明はアームライト以外、すべてレセップというE17タイプの電球を取り付ける台座を壁や天井に取り付け、そこにダイレクトに電球を付ける方式としました。
レセップはアマゾンで買って、電気工事の業者に支給しましたが、これも照明器具代を抑えるコストダウンのアイデアです。このレセップに2階も1階も調光可能なスポットライトなどを自分で取り付けました。配線剥き出しだと住宅完成時の完了検査に通らないため、とりあえずレセップを使用したダイレクト照明はリーズナブルでおすすめです。
ちなみにダイニングの照明は、当初ペンダント型を考えていて、位置を決めてあったダイニングテーブルのちょうど真ん中の位置に天井から配線を出しました。しかし天井の梁を見ているうちに、「これを利用したほうが面白いな」と思い立ち、梁を利用してアームライトを設置しました。後で気づいたのですが、コルビジェも同じ照明を、両親のために建てたレマン湖畔の住宅(「小さな家」という名称で有名)でダイニングテーブルに使用していました。
電気の話ついでに細かいところですが(こだわる方も多いと思うので・・)、我が家の壁のスイッチについて説明します。壁スイッチは、特殊なところ以外、パナソニック、クラシックシリーズ、タンブラスイッチのチョコ色と金属プレートで揃えています。同じようなスイッチで海外製もありますが、パナソニックなので値段が手頃な上に信頼性が高いのと、スイッチの感触が良いので気に入っています。
またコンセントは、同じパナソニックのWN1512AK(チョコ色)に金属プレートとしています。このコンセントは3ピンですが、非メッキでオーディオの音質が良いらしく、値段も普通のものとあまり変わらないため、室内はすべてこれで統一しました。おかげで電子レンジも音がいいコンセントを使っています(笑)。
次は1階の最終フロアプランと仕様の説明をしたいと思います。
8. 軽井沢移住 Vol.8に続く。