– 軽井沢の住宅建築 建築業者の検討 –
ご訪問いただきありがとうございます。
2019年に、長野県、軽井沢町に移住した“ぐじ”と申します。
vol.2の土地探しに続き、今回は建築の話をしたいと思います。
<さまざまな建築業者>
自分の家を建てるというのは、本当にワクワクします。これを人生で2度行えるとは考えてもいませんでした。まぁ離婚するとは考えてもいなかったということでもありますが・・(汗)
ただししつこいようですが、予算はかなり限られます。なにしろ土地代に加え、宅地への造成費なども建築費にプラスして必要となります。また私の年齢ではローンを組むことは不可能です。
一方世の中には贅を尽くした魅力的な住宅がたくさんあります。自然の近くに建つ別荘に限っても、建築雑誌を見ればこんな家に住んでみたいと夢が膨らみます。
しかしながら私の限られた予算では、とてもそんな夢のような家は作れません。その上、別荘ではなく本邸ですから、生活に必要なものも数多くあります。
そのため私の家作りでは、何を取り、何を捨てるか、というプライオリティがとても重要でした。これからお話しする内容は、そういったプライオリティをどのようにつけていったかという話でもあります。
さて、建築の検討に入ったわけですが、私は横浜の家が気に入っており、最初はその家を建てた住宅会社を訪ねました。その住宅会社は、Wハウスといい、私がお世話になった頃はデンマークの輸入住宅を大々的に売り出していました。特に気に入っていたのは、高気密に加え1階が全面温水式床暖房であったところです。この方式であれば軽井沢の寒い冬にも適応するのではないかと考え、まずは訪れてみたわけです。
ところが、私が家を建ててからかれこれ20年以上が経っており、その会社が現在扱っている家は、どちらかというとあまり特徴がない平均的な日本の住宅、という感じに変わっていました。
もちろん以前のような輸入住宅らしいものも建てることは可能とのことだったのですが、いかんせん軽井沢には建てた経験がなく、職人さんに長期出張してもらい建てることになるので、予算がその分多くかかるということでした。
そのため、その住宅会社を早々にあきらめましたが、床暖房に代わる蓄熱暖房というものがあるという情報を教えてもらいました。
首都圏の住宅会社は難しいということが分かったので、次に軽井沢や軽井沢で建築が可能な長野県の業者をあたることにしました。
基本的に知り合いがいないので、すべてネットから情報を仕入れコンタクトしました。建築コストの低めのところから、別荘建築で実績のある有名な会社まで、合計で6社ほどにあたったと思います。
また同時にネットで建築家を紹介してくれる「SUVACO」というホームページを見つけ、そこを通じ紹介してもらった建築家の方ともやり取りを始めました。おいおいご説明したいと思います。
<土地を測量する>
このコンタクトした建築会社の中に、有償になるものの、土地の高低差の測量と、生えている樹木の調査をしてくれるというところがありました。極端に高額ではないですし、今後建築検討をしていくためにも有効なので、ぜひお願いすることにしました。
この調査をしていただいた測量図は非常にすばらしいもので、その後おおいに役立ちました。測量図はコンターラインという等高線が緻密に入っており、地形の変化が手に取るように分かります。生えている樹木の場所、おおまかなサイズ、種類なども明確に把握できました。
測量基準点は三角形の頂点付近に取ってもらったのですが、等高線から読み解くと、そこから南方向にはやはり傾斜が緩く、歩いて感じた通りの結果が出ていました。そのため、この部分を等高線にそってうまく活用すれば、地形的には自動車や人の出入りのためのアプローチがやはり作れると思いました。
この測量図を基に、模型を作り土地の利用方法をさらに検討したかったのですが、残念ながら時間がなく、これはあきらめました。
できるだけ多くの会社にコンタクトすると、時間はかかりますが、その分このような有益な情報が得られると思いました。この測量図は買取りなので、これをベースに何社かは建築プランをサービスで作ってくれました。
ただしプランについては、すべて丸投げではなく自分の間取りのイメージをまとめ、事前にお伝えしました。希望が具体的に伝わると考えたためです。それが次のBABY PLANですが、何となく横浜の家を再現したような雰囲気になっています。実はその横浜の家も住宅会社が提案するプランに満足できず、結局自分が考えた間取りで作ってもらったので、その経験があったせいかもしれません。
自分で実際プランを考えてみると、どのような家が希望なのか、どこにプライオリティを置きたいのかなど、自分自身だいぶはっきりしました。特に必要としたのは、息子たちが来た場合の2部屋の確保と、バイク収納のため玄関を広くしたいということです。
さてどんなプランが出てきたでしょうか。
<A社のプラン>
最初にプランを出してくれたのは、軽井沢では大手の建築会社となるA社でした。軽井沢での建設実績も数多くあり、信頼できそうなため、まず初めにここに検討を依頼しました。
家のプランについては、最初に先に述べた希望の間取りを事前にお伝えしました。結果その通りのプランが出てきたのですが、正直あまりわくわくはしませんでした。測量図が出る前なのでいたしかたないのですが、土地が持つ個性をもう少し生かしたいと思いました。
そして一番ショックだったのは値段です。だいぶお高い・・。造成を除いた建築費だけで3千万円を超えています。
温暖な地域の造成地に建てるのとは違い、基礎造りや寒冷地対応の費用がかさむとはいえ、この大きさの家でも、こんな価格になってしまうのか・・と少々落胆しました。薪ストーブは希望して入れてもらったのですが、これも現実的には、私の場合贅沢品なのかもしれないと思いました。
また土地の形状から、この位置にクルマのアプローチを造成することは困難です。土地の測量図を提出する前とは言え、測量図を提出する依頼者はそんなにいないはずで、通常はその土地を一度見てからプランを考えるのが普通かと思います。家のプランまでは進まなかったものの、同時に依頼した他の建築業社さんは、まず先に土地を見に行かれていました。
サービスで作っていただいたプランではありますが、この業者さんは対応が事務的な印象を受け、この先信頼でできないかもしれないと判断し、この時点で検討を終わりにしていただきました。
<B社のプラン>
次にB社がプランを出してくれました。ここはこちらが希望した間取りではなく、私の意図を汲んでオリジナルの提案をしてくれました。そこが逆に親身な印象を受け、信頼がおける気がしました。
いただいたプランは斜面を利用し1階と2階の面積を変えた案でした。ここはすでに測量図があったので、より立体的な検討がしやすかったのではないかと思います。基礎は鉄骨で組む方式で、全体的な印象は普通に傾斜地に建つ別荘という感じでした。
駐車場は東側道路に2台分、玄関はその道路に面した2階にあり、1階は斜面があるため、2階の半分程度の床面積に寝室などの小部屋があるという感じです。
このプランは、高低差を利用するアイデアは良かったのですが、やはり土地の特徴をただの傾斜地としか考えておらず、どうも楽しくないと感じてしまいました。特に家の西側の壁面が真っ平らで、何か工夫がほしいと思いました。
それと外観デザインとして、窓の位置や大きさがバラバラで、家としての美しさやまとまりを感じませんでした。これは日本の住宅によくあることに思えますが、室内の都合のみを考えた窓の大きさや配置により、外観はその結果なりゆきでできてしまったように思えました。家の外観は室内の裏側という扱いです。かつて若い頃に読んだ伊丹十三のエッセイにも日本の家屋について同様のことが書かれていたかと思います。
そしてクルマ2台分の駐車場を法面に作る必要もあり、予算的には結果3千万円を大きく超え、かなりの予算オーバーとなってしまうのが、私にはハードルの高いプランでした。
<C社のプラン>
次はC社のプランです。C社はA社同様、私の希望間取りイメージからプランを作ってくれました。
ただプラン通りではあるのですが、結果、全体的にどうも普通の家に見え、あまりわくわくしませんでした。理由はおそらく、家全体のプロポーションと切妻屋根のカタチの組み合わせにあったと思います。
屋根については、片側に雪落ちが集中しない配慮とのことですが、家のプロポーションが縦長で普通なところに切妻の屋根が乗ると、特徴という意味では、軽井沢に住むという高揚感に対して、家のキャラクターがあまりに乏しい印象を受けました。旧軽井沢あたりにありそうと言えば、言えなくもないのですが・・。
– 軽井沢の住宅建築 自己プラン –
<自動車デザインの手法で考えてみる>
ここまで各社に検討をしてもらい至った結論は、やはり私の場合、、、
「自分でデザインしないと気がすまない」
ということでしょうか・・。
そこで、次は間取りと外観の印象を同時にまとめたプランを自分で考え、それを各社にベースとして検討してもらうことにしました。それにしてもハウスメーカーの方々、なんとも申し訳ございません・・。
これまで建築関係の勉強を多少してきたので、ある程度の知識はついてきていました。ただし基本的に素人なので、専門家からしたらおかしなところがたくさんあるかと思います。そこは自分の家ですので、どうぞご容赦を・・。
また実際に建築家の方がどのようにプランを発想するのか分からないものの、自分ができることとして、自動車のデザイン開発手法に近いやり方で考えてみようと思いました。
自動車は言ってみれば小さな家みたいなものですが、大きく言うと、エクステリア(外観)デザイン、インテリア(内装)デザイン、CMF(Color = 色、Material = 素材、Finish = 仕上げ)デザインの3つに大別できます。このうち、まずエクステリアとインテリアを同時に考えることにしました。
自動車のデザイン(カーデザイン)は、まずコンセプトに沿ってアイデアスケッチを行います。建築で言えばエスキースという段階かと思いますが、できるだけ沢山のアイデア出しを行います。これをアイディエーションと言います。そのたくさんのアイデアを検討をしながら、どんどん案を絞っていくわけです。
実際に世の中を走っているクルマのデザインは、すべてこのように多くのデザインからリファインし、絞った結果です。つまり最終選び抜かれた1案が世の中を走っているわけです。決してアーティストが作品を作るように、ひとつのデザインのみに集中して完成させるわけではありません。エクステリアもインテリアも同様です。
さてこのようなプロセスからすると、デザインを始めるためには、まずコンセプトを決める必要があります。しかしながらまだ詳細のコンセプトを決められる状況ではないため、以下のように大雑把な考え方を決めました。
1. 特徴のある地形を生かしたデザインであること
私が購入した土地は、vol.2でお話ししたように、立体的な個性があります。その個性をデザイン面で活かしたいと考えました。
2. 軽井沢の土地柄に似合うこと
軽井沢の私が住むエリアの雰囲気を壊さず、昔からあったように自然になじむ雰囲気を理想としました。そのため斬新さや奇抜なカタチは極力避けたいと思いました。
3. デザイン的に美しく面白みがあること
自然になじむカタチは理想ですが、ただ目立たなくするのではなく、洗練された結果としてデザイン的に美しさや面白みを感じるものが良いと思いました。美しいデザインのクルマは決して奇抜ではなく、クルマを見るたびに いいなぁ と思うのと同じです。家に帰ってきた時に、やっぱりいいなと思える個性は大事だと思いました。
4. 安価に実現が可能なこと
そうは言っても、まず予算がないと成立しません。私の限られた予算で再現可能なデザインが必須となります。
<アイディエーション>
アイデア出しは、結局50案近く考えたのではないかと思います。そのうち、絞ったものを以下ご紹介します。
*いずれもコストメリットから建築面積を小さくしています。
*片流れタイプの屋根は地形に沿うような方向に傾け、土地の雰囲気に逆らわない見た目としました。この片流れ屋根の傾きの考え方は吉村順三の「軽井沢の山荘」に倣ったものです。
*バツの線は「吹き抜け」という意味になります。
*すべてのレイアウトに同じ大型のソファーが入っていますが、これは離婚をした時に私が引き取ったもので、軽井沢の家に置くことを決めていました。
*カルデバイ(ドイツのメーカー)の浴槽名が具体的に入っているものもありますが、これはドイツ暮らしで気に入っていながら、横浜の家では実現できなかったもののリベンジです。
合計6案あります。それではいきますね。
1.長方形案(約89㎡/27坪)
オリジナルプランであるBABY PLANをベースに家の外観に工夫を加えた案です。屋根を片流れにすることにより、モダンな印象にしました。特に駐車場のアプローチから家を見た時に、その形が一番印象的になるように建物を配置しました。
2.スキップフロア案(約83㎡/25坪)
地形を生かしたスキップフロア案です。ダイナミックな土地の印象をそのまま生かしたスキップフロアが基本になっており、それに吹き抜けを加えた立体的な空間構成を特徴としました。
特に玄関から入って下の階を見ると、その土地に立ち、自然に周囲を見たような広がりを、室内空間としても感じられるようにしました。加えて下の階をリビングとし、とりあえず小さいながらウッドデッキをつけることにより、自然とのつながりを強調しました。
このようにスキップフロアにすることにより、基礎高は斜面に沿って段差のある形となり、基礎が鉄骨だとしても、外観は空中に張り出した不安定な印象を緩和できると考えました。
またスキップフロアの段差が外観にもそのまま出るため、特徴ある立体的な地形に、これも立体的でダイナミックな印象の家が組み合わせされることになり、相乗効果でそれぞれが引き立つと考えました。
この案が一番希望だったので、細かく仕様が記入してありますが、他の案も同様な仕様イメージです。
3.L型スキップフロア案(約87㎡/26坪)
これも地形を生かしたスキップフロア案ですが、L型にしてさらにスキップを増やしています。これは敷地的にその方向に家を伸ばせるためですが、最上階が個室と浴室等、その下がダイニングキッチン、その下がリビングという構成です。最上階から見渡すと、下のフロア方向によりダイナミックな広がりを感じ、土地の印象を生かせるかと考えました。
また外観も基礎部が3段となり、より西方向に長くなるため、立体的かつ伸びやかな印象の家になるのではないかと思いました。
4.コンパクトスキップフロア案(約87㎡/26.5坪)
次はコンパクトなスキップフロア案です。これまでのスキップフロア案が地形を生かしているとはいえ、どうしても構造が複雑になるのに対して、この案は床こそスキップフロアになっていますが、屋根は段違いにせず、シンプルにすることによりコスト効果に期待したものです。
5.正方形案(約93㎡/28坪)
そろそろあきてきましたよね。もう少しお付き合いください・・。
さて次は正方形案です。これまでの地形を生かしたスキップフロア案から離れ、平面から見た時に、3角形の敷地に馴染みやすくした案です。
こちらは総2階建て、かつ上から見ると完全に正方形にしました。その理由は、まず同じ床面積の場合、正方形であれば、コンクリートの高基礎としても、斜面において切土面積を少なくすることができ、効率的であること。また正方形の総2階建てであれば、一番単純な構造によるコストメリットと、頑丈な駆体を両立できると予想しました。
6.コンパクト案(約81㎡/25坪)
最後は同じ正方形ですが、コストメリットを考え、ぎりぎりまで面積を小さくしたコンパクト案です。言ってみれば山小屋ですね。バイク用のアプローチもあきらめました。これが予算オーバーになると、もはや建築は困難なので、何か抜本的に方法を考え直さなければならないという最後の手段です(笑)。
さあ、この後はどうなったでしょうか?